Thursday, June 28, 2007

運命

ほんの十日程前、新宿に大叔母の見舞いに行った

足が弱った叔母と母を車に乗せ、仕事の前に病院まで連れて行く

母と叔母の二人がとても可愛がってもらっていた人


部屋に入ると母を見て驚き、僕を父と勘違いしたようだ

その痩せこけた頬と鼻に付けられた酸素吸引チューブが痛々しく

記憶に無い人だと思っていたのだが

顔を合わせると、記憶の底から何かが突付く

あっ、知ってるこの人・・・


僕は軽く会釈をして、病室の片隅から彼女らを見ていた

その時脳裏に過ぎったのは大叔母達三人の写真を撮る事だ

僕は愛用のコンパクトカメラを腰のケースに入れ携帯していた

でも大概は病床の姿は皆、記録に残すのは嫌がる

特に女性は・・・

しかも書いた通りの痛々しい姿だ

こう云う写真を撮ることは非常に難しい、人の心の在り様が難しいから。。。

結局僕は写真を諦め、食事をし始めた大叔母に挨拶して駐車場へ


そして昨日、大叔母は亡くなった

痛々しい中にも、身内と会う喜びからだろうか

こちらが驚く位元気で、饒舌だった

食事に至っては、額に汗し鬼気と迫る真剣さがそこにはあった

食べるって事が、生きるって事に繋がっている・・・漠然とそんな事が頭に浮かぶ程に


あの時、果たして撮っておくべきだったのだろうか

こう云う判断は非常に難しい

しかし、いつも思うことが一つある

写真家だからこそ撮らない、或いは撮るべきではない時があると

今回がそうだったかどうかは正直分からないけれど

最後に一目会えた事には感謝している

大叔母の冥福を祈ります